さらに親密さを増す、ファッションとアートの世界
レディースファッションの世界で「クラシック」なスタイルに脚光が集まっています。貴婦人を思わせる品格テイストが新トレンド「ブルジョワシック」として復活。装飾性と気品を兼ね備えた装いには、王妃マリー・アントワネットにも愛され、最初の女性用腕時計を制作したという<ブレゲ>の歴史を感じさせるたたずまいがぴったりです。
華やぎをまとううえで、ウォッチは装いのムードを決める「マジックピース」となります。ダイヤモンドやマザー・オブ・パールで飾られた花びらモチーフが目を惹く<ハリー・ウィンストン>は申し分のない特別感が着姿に気高さも漂わせてくれそう。フェミニンなワンピースやエレガントなセットアップにもノーブルなアクセントを添えます。
日本の美意識がモードの重要テーマに浮上してきました。静かでクールななかにも、クラフトマンシップや繊細さを宿す、日本流の表現は、<クレドール>にも確かに感じ取ることができます。ビジネスシーンになじむうえ、普段使いにも向くオールマイティーなウォッチ。ジェンダーレスなムードを帯びた風情もオントレンドのたたずまい。目をやるたびにプラウドな気持ちを呼び覚まします。
アートとファッションは年々、親密さが増しています。「芸術の秋」には美術館やギャラリーに出掛ける機会も増えるもの。多面カットを施したケースがきらめき、まるで宝飾ブレスレットのような<センチュリー>は、アートなお出掛けにもこの上ないほどの好パートナー。手首からクリスタルのような輝きがあふれて、品格も醸し出しています。
秋から先は、ケープやマントに代表されるレディーな装いが盛り上がります。少し古風なボウタイ・ブラウスの袖先には、やはりヒストリカルな落ち着きを宿すウォッチがお似合い。1860年に始まった老舗ウォッチ&ジュエリーメゾン<ショパール>は、淑女風の装いにふさわしいリュクスを放ちます。さりげない所作にも、ジュエリーウォッチの高貴な表情がクラス感を印象づけてくれるはずです。
世界的に再評価が進む、職人技
メンズの装いに「正統派回帰」の傾向が強まってきました。2019-20年秋冬シーズンはフォーマルウェアの品格を、デイリーな着こなしに溶け込ませるスタイリングも提案されています。クラシックな紳士姿になじむヘリテージ感は、フランス革命前の1775年に創業した<ブレゲ>ならでは。深いブルーやマリンモチーフが醸し出すスポーティー気分も今のメンズモードと融け合います。
職人技の再評価が進むのも、今のおしゃれトレンドの世界的な流れです。精緻なテーラードや、丁寧な刺繍が紳士の着姿に品格を寄り添わせます。手の込んだからくり構造を得意とする<ジャケ・ドロー>の精巧なディテールは、クラフトマンシップの粋。自然に視線を呼び込む仕掛けです。研ぎ澄まされた機構美もアートの域に達しています。
アウトドアで鍛えられた機能性がメンズウェアに注ぎ込まれるようになってきました。アクティブな装いと先進のテクノロジーが精悍な着姿に導きます。工業デザイナーが手がける<レッセンス>ミニマルデザインはクールの極み。服との相性を選ばないブラックトーンだから、シーンフリーな相棒ウォッチになるはずです。
長く続くブランドはそれぞれが刻んできた「時間」の重みを表現しています。キーワードは「ヘリテージ」。メンズファッションで強まるクラシック志向にマッチした提案です。<グランドセイコー>が用意した、手巻き式の味わいは、時計の歴史性や持ち主の自負まで感じさせてくれそう。奇をてらわないこしらえもシックな装いに寄り添います。
三つ揃いに象徴される正統派が勢いづく一方で、「静かな主張」を宿すアレンジがおしゃれ上手の関心事に。スーツほどかしこまらないセットアップは軽やかな着こなしの切り札。ひそやかに知性やエレガンスを薫らせます。<ブランパン>の文字盤は、古風なローマ数字や優美な針など、目を惹く工夫がいっぱい。飾らないウィットが印象づけるのは持ち主の「遊び心」かもしれません。
宮田 理江(ファッションジャーナリスト)
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアで、コレクションリポート、トレンド分析、着こなし解説、映画×ファッションなどを幅広く発信。自らのテレビ通販ブランドをプロデュース。ブランド立ち上げのコンサルティングやECサイトのアドバイザーなどもマルチにこなす。TVやセミナー、イベントへの出演も多い。