歯車族バトン
2018/10/12
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シーラホールディングス会長 杉本「再起を掛けた男の情熱とこだわり」4-仕事も時計も変わらない、筋を通すということ

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第4回「仕事も時計も変わらない、筋を通すということ」

広田:5本のデイトナからは、ぶれない姿勢が伝わります。

杉本:代わり映えしませんね(笑)。でもビジネスでも、売り上げ100億ちょっとの会社ですが、納得できる仕事をやって、自分たちの充実感があります。自分で作ったものを自分で売る。現場所長なんかは、僕が現場に行くとものすごく嫌そうな顔をするんですよ(笑)。細かいことを指摘するので。建築家でもないのに何なんですかと嫌味を言われたこともある。でもそれは僕にとっては褒め言葉で、お客さんにとっては一生に一度の買い物になるかもしれないし、全部屋を細かく見て回ります。そういう仕事を自分なりに納得してやっているのが、お客様に対する敬意だし、それが自分の仕事につながっています。

広田:モチベーションになっているんですね。

杉本:失敗してからは、ものの買い方も生き方も、社員の前で見せられるかというのを念頭に置いています。銀座にも一切飲みに行かなくなったんですよ。一晩何十万も女性に使うような姿は、頑張ってくれている社員に見せられないから。銀座に行く時は絶対先輩に奢ってもらう(笑)。見栄の張り合いをしても正直意味がないし、お金で勝負が決まる世界は興味が湧きません。それよりも価値を感じてお金を支払うようなものであったらいいなと思います。本当に浮足立っていないというのは、自分でも感じますね。だから仲間内でも、お前と話していると本当に夢がなくなるわと言われて(笑)。興味のあるものの前では、子供のようにすごくはしゃぐんですけどね。

広田:醒めているようでも熱い。そうした見方や考え方は、若い頃からお持ちだったんですか。

杉本:なかったですね。僕の場合、多くのことを経験した上で醸成されたものなので。民事再生をして、ああいう経験をさせてもらってから、いろいろなことに対してきちんと考えようと。400億の借金を抱えるって人生はそうないじゃないですか。1日400万の金利がかかっているし、いくら働いても借金がなくならない。そんな状況に置かれて、人の温かさを知る反面、借金を抱えた途端、手の平返しで足蹴にされたこともありました。自分自身が痛い目にあって人の痛みもわかるようになったと思いますし、そういう時に人と人との付き合いや、他者への想像性も身に付きました。どれも仕事を通じて、身に付けてきたことですね。

広田:それは仕事も時計も変わりませんね。でもそれが一番難しい。

杉本:31、32歳ぐらいで失敗してから、こういう生き方をしていこうと決めて、今ようやく自分なりの方向性が決まったような状況です。

広田:ご自身では今後のステップのイメージはお持ちですか。

杉本:仕事に関しては、未来年表みたいなものはできあがっていて、余計なことはせず、自分たちが納得したことをやり続けていきます。すでにそれなりの形になってきています。

デイトナRef.6263/ポール・ニューマンが愛用したエキゾチックダイヤルのレアモデル。

広田:でもデイトナは増えていく気が(笑)。時計選びが王道からぶれずに広がっていくのを拝見するのが楽しみです。

杉本:そうですね(笑)。これが正しいかどうかわかりませんけど。自分の生き方なのかなと思って。落ちぶれないように頑張ります(笑)。

 

構成・文 柴田 充
写真 奥山栄一

日本橋三越本店 ウオッチコンシェルジュ
立花 典子

この対談を終えて「人に時計あり」という言葉が浮かびました。時計の数だけその時計にまつわる所有者の思いやストーリーがありますが、杉本様のロレックスのデイトナのお話も大変印象的でした。いい時も悪い時も経験され、手放そうと思ったけど手元に残ったデイトナは杉本様にとって運命の1本といっても過言ではないかもしれません。

 

今回で、シーラホールディングス会長 杉本宏之氏との歯車族対談は終了です。
次回は、TOKYO BASE 代表取締役 CEO 谷正人氏の歯車族対談をご紹介します。

第1回

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広田雅将さん

広田 雅将
Masayuki Hirota

時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長

1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。

杉本 宏之さん

杉本 宏之
Hiroyuki Sugimoto

シーラホールディングス会長

1977年生まれ。高校卒業後、住宅販売会社に就職して22歳でトップ営業マンとなる。24歳のときにエスグラントコーポレーションを設立。デザイナーズワンルームマンションの開発を皮切りにプロパティマネジメント、賃貸仲介業、人材派遣業、リノベーションなどと事業を拡大し総合不動産企業に成長させる。2005年には名証セントレックス市場に業界最年少で上場を果たす。2008年、リーマン・ショックによって業績が悪化し、負債400億円を抱えて、2009年3月民事再生を申請。2010年にSYホールディングスを設立し、現在は売上高100億円を超えるまでに成長。著書は『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』(ダイヤモンド社)など。

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