MAINTENANCE
2018/01/16
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日本橋三越本店 ─時計クリニック物語─ 時計メンテナンスのススメ VOL.3 モバード編

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時計は世代を超えて受け継がれていくものです。今回のクリニック依頼は御祖母様が愛用されていたというモバードの時計です。かなり時間が経っており、交換部品を入手することは困難。さらにレディースウォッチのため、ムーブメントも小さく、よりデリケートな作業が求められます。そのメンテナンス修理に加え、レザーストラップを交換するドレスアップも施しました。そうした内と外をリフレッシュすることで、往年の輝きを取り戻したのです。

VOL.3
今回のブランド :モバード
製作年代    :年代不詳
キャリバー   :cal.58

モバードは1881年に創業し、1950年代まであらゆるムーブメントを自社製造した名門ブランドとして知られます。今回の時計は針は動くものの、時間が合わず、すぐに止まってしまうという状況でした。また経年劣化でくすんだ文字盤やゴールドプレートのケースはくすみ、調整と磨きを中心に作業は慎重に進められました。

FEATURE

モバードの修理内容

①: 小型ムーブメント特有の技術的な難しさ


一般的なムーブメントと比べると、その小ささは一目瞭然です。指先ほどの大きさしかないため、通常使っている工具もサイズが合わず、通常の分解プロセスを変えていくことも必要です。またテンプの動きが小さいため、安定した精度を出しにくく、ヒゲゼンマイの調整も難しくなっています。

②: 細部に磨きをかけ、“手数最小”に仕上げます


酸化し硬化していたオイルを除去後、給油します。そして香箱からの動力を受ける、2番車と呼ばれる歯車のほぞの摩耗を調整。作業もむやみに手を入れると全体のバランスを崩してしまうため、症状を見極め、原因を最小で処置しなければなりません。この手数最小が熟練のノウハウなのです。

③: 適応サイズから好みで選べるストラップ


ムーブメントを分解掃除し、すべての調整を済ませましたが、これではまだ実用に十分ではありません。そこで使い古したストラップの交換へ。適応サイズのレザーやカラーのバリエーションから選ぶことができます。

④: ストラップ交換だけでも印象は見違えます


ストラップを外してみると、ケースとつなぐ内部のバネ棒も腐食していました。これを交換し、新しいストラップにすると印象も一転。ドレッシーなスタイルがより現代的に蘇りました。

VOICE

年代にふさわしい風格を保つ

年代を経た時計は、一部のパーツを交換しただけではむしろ他の部分に負荷がかかってしまうこともあります。そのため全体のバランスを見て、磨きやクリアランスの調整によって機能を維持させます。今回のモバードはドレスウォッチということもあり、日常で酷使された形跡もなく、内部のパーツ破損もありませんでした。ただ金貼りのケースや文字盤の表面は剥離の恐れもあり、適度の磨きに抑えました。でもそれも年代にふさわしい風格だと思います。丁寧に扱えばまだまだ現役で使うことができますよ。

時計クリニックでオーバーホールを済ませたKさんのコメント

この時計は3年前に祖母の形見として譲り受けました。祖父が祖母に贈ったもので、ちょっとしたお出かけの時に大切につけていたと、母から聞いていました。当時、祖母は和装に合わせていたそうで、私自身も着物が好きなのでぜひつけたいと思ったのが修理のきっかけです。時計を直すだけでなく、いろいろな発見がありました。たとえばストラップを変えるとアクセサリーのように楽しめるということ。当初はオリジナルに戻そうと思っていましたが、修理カンターで相談して、いまの私に合うように明るい桜色にしました。そして手巻き式も初めてなので、ゼンマイの巻き方や扱い方も教えていただきました。技術者の方と直接対面して話しを伺えたことで、安心してお任せすることができ、とても満足しています。

今回の費用内訳

<修理金額>
基本工料 : ¥42,000(税抜き)
部品代  : ¥0(交換部品はなし)
時計ベルト: ¥18,000(税抜き)

<モバードの作業内容>
・機械の分解、洗浄、組み立て、タイミング調整、ランニングテスト
・外装のライトポリッシュ(メッキのために軽く磨いたのみ)、洗浄

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