時計にはブランドの歴史があり、時計師の想いがあり、そして持ち主との出会いや思い出が詰まっています。
そんな大切な物語が詰まった、貴重な1本をメンテナンスしてみませんか。
今回は2人の方々の時計をお預かりしました。
ロンジン コンクェスト (持ち主:K様)
時計ストーリー
ロンジンは、昨年創業185周年を迎えたスイスの老舗時計ブランドであり、ヴィンテージウォッチ市場でも高い人気を誇る。モデルのコンクエストは、1954年に初代が登場したロングセラーで、初期のスタイルは現在もヘリテージとして復刻されている。現行シリーズはスポーツラインに位置づけられ、クオーツ始め、専用アプリによる光の点滅で時刻が同期できる最新機能の装備などブランドの革新を象徴する。
時計ヒストリー
「30年程前に祖父がシンガポールで購入し、父に譲ったものを1年前に譲り受けました。長い間眠っていましたが、孫の私が使い続けることで、亡き祖父も天国で喜んでくれているかと思います」(本人談)
時計メンテナンス
年代相応の退色はあっても、文字盤に錆やひび割れもなく、大切に扱われてきたことが伝わってくる。動作も問題なく、搭載するムーブメントは汎用ならではの高い信頼性を誇る。分解洗浄の上、消耗パーツのパッキンを交換。こうしたオーバーホールの作業は通常、半日程度で終わるが、その後の精度を始めとする検査には1週間以上の経過を必要とする。検査は実際の作業と並ぶ重要なプロセスなのである。
交換部品:パッキン
工料:41,040円(税込)
オメガ コンステレーション (持ち主:H様)
時計ストーリー
1952年に誕生したコンステレーションは、当時としては画期的な自動巻き式とともに、クロノメーター規格を取得し、ブランドにおける高精度の追求を象徴する。“星座”を意味するネーミングに、文字盤に星を掲げ、裏蓋には、精度を競うコンクールが開催されたジュネーブ天文台の観測ドームを刻印するのもそのためだ。ラグと一体になったケースデザインは、コンステCと呼ばれ、60年代後半にジェラルド・ジェンタが手がけた。
時計ヒストリー
「リオ五輪閉会式時に安倍総理大臣がつけているのを見て、調べたところ、私の誕生年に発売されていたことが判明し、早速ネットで購入しました」(本人談)
時計メンテナンス
近年、ネット購入の増加で修理依頼も増えた。止まった状態だったため、その原因究明のため、まずパーツの実状を確認する。搭載するCai.564は自社製で、秒針は4番車ではなく秒カナに取り付けられる設計に、さらに日付早送り機構はリュウズを1段引き、さらに引き上げる度に日捲りする。これもトラブルになりやすい部分。幸い、パーツ損傷もなく、注油によって問題なく動き出した。パッキン交換の他、風防は磨いて仕上げた。
交換部品:パッキン
工料:75,600円(税込)
取材・文 柴田 充
写真 奥山 栄一