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2020/10/15
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日本橋三越本店 ウォッチギャラリーSALON ビジネスマンの選択_3クオンタムリープ(株)代表取締役会長 ファウンダー 出井伸之

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第3回「選ぶ時計から見えてくること」

時計はビジネスをうまく進めるための有効なツールでもあると思う

――時計に興味を持ったのはどのようなきっかけからでしょう。

「23歳の頃、ジュネーブに留学していました。ジュネーブは時計の街ということもあり、日本から来る方を時計店に連れていく機会も増えて、時計というものについて考えさせられようになりました。ある時、日本から来た人がクオーツを手に『これはまったく狂わない。機械式とは違うんだ』と言うから、偉い方でしたが『だから何なのですか』と言ってしまったんですよ(笑)。生意気だって怒られましたけれど」。

――その根拠というのはなんだったのですか。

「だってそうじゃないですか。技術がいくら進歩しても、機械式時計は未だにあるということは、機能を超えてアートになったということではないでしょうか。日本にも優れた時計の技術はありますが、その魅力に至るのはまだ限られているように思います。クルマでも電気自動車は今後の主流だけれど、僕は買わないと思います。やっぱりエンジンのクルマを運転する楽しさを知っていますから。モノ作りについてはソニー時代から一体どのようにデジタルに対処すべきかと考えてきましたが、その基本となる考えはやっぱりヨーロッパでの10年間の生活で培われたのです」。

――その海外では腕時計は社会的にどういう位置付けなのでしょう。地位や肩書きであり、TPOに合わせたスタイルのひとつ?

「たとえば金融系ビジネスマンでも1億円くらいする時計をつけ、バーで飲んでいると、この時計に寄ってくる人がいて、そこからビジネスが始まるなんてことがあります。時計は、ひとつの職業におけるステイタスシンボルなのでしょう。普通のサラリーマンが20万円得るのに一生懸命働くのに対し、ひとつのディーリングで何百万円とか何千万円とか稼ぐわけです。そういう人たちが”それだけの力を持っている”と誇示するサインであり、ビジネスをうまく進めるための有効なツールでもあります。それだけでなく、着けている時計を見れば、性格や嗜好もすぐわかりますよね」。


タイメックス ウィークエンダーシリーズ。これは気楽に使えるのでゴルフの際に愛用していると言います。

――とくにスイスで実感した時計のあり方とは?

「毎年、バーゼルとジュネーブで時計展示会がありますよね。時計という産業は凄いなと思います。有名ブランドだけでなく、中小メーカーやパーツだけ作っている会社があって、本当に一つひとつ手作りしているものもあります。そういうのを見ると、70年代に時計がクオーツ化した段階で途端に機械式を諦めてしまった日本と、国をあげて頑張っているスイスでは、国民性が全く違うなと思いがあります」。

――時計に感じている魅力は、そうしたモノ作りの原点的なことですか。

「そうですね。本当は時計はいらないんですよ。時間を見ようと思えば、携帯やタブレットPCで十分ですから。しかし時計は、時間を知るだけじゃなく、思い出を作っているような感じがするんです。そういう気持ちで時計を使っている人は多いんじゃないかと思います。スマートウォッチは時計じゃなく、情報ツールでしょう。スマホやタブレットもあるのに、さらに腕に着ける意味がわからない。周りの若手は着けているけれど、僕は絶対いらないです。だって全然アートじゃないから」。

取材・構成 柴田充
写真 奥山栄一

 

第4回は出井流の時計の楽しみ方についてご紹介します。

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出井伸之さん

クオンタムリープ 代表取締役会長 ファウンダー
出井伸之

1937年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1960年ソニーに入社。1962年スイスのジュネーブに留学。帰国後、1968年フランスに赴任、ソニーフランス設立に従事。1979年オーディオ事業本部長、1988年ホームビデオ事業本部長を経て1989年取締役就任。広告宣伝本部長、クリエイティブ・コミュニケーション部門長を経て、1994年に常務取締役、1995年に 代表取締役社長に就任し、会長兼CEO、取締役 代表執行役 会長兼グループCEOを歴任。10年に渡ってトップを務め、ソニーの変革に力を注ぐ。2005年6月会長兼グループCEO退任後、2006年9月クオンタムリープ株式会社を設立。大企業変革支援やベンチャー企業の育成支援活動を行う。NPO法人アジア・イノベーターズ・イニシアティブ理事長。社会運動「アドベンチャービレッジ」村長。2020年4月より現職。

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