WORLD WATCH FAIR
2018/05/16
2784views

【WWF2018】第21回 三越ワールドウオッチフェアに向けて 〜 ウオッチエングレーバー 金川恵治氏の世界

コメント 121

アンティークショップなどを訪ねてショーケースを覗いた時、真っ先に目に飛び込んで、心を奪われるのはその装飾の美しさだったりします。
ダイヤルや懐中時計の上蓋に精巧に彫られた美しい彫金技術。それは時代時代を表しながら、時計を芸術品に昇華させてくれる、現在でも欠かせない技術のひとつです。

今回ご紹介するのは日本を代表する彫金師のひとり、金川恵治氏です。
彼は時計のケースや裏蓋、ムーブメントなどに彫金で装飾を施すエングレーバーとも呼ばれる職人。
そんな金川氏の新しい作品を是非とも拝見したく、秋葉原にあるジャパンブランド「ミナセ」を手掛ける協和精工㈱と共同で運営している氏の工房「K CRAFTWORK JAPAN」を訪ねました。
金川氏は誰もが知っている世界的なキャラクターを手掛けるイラストレーターとして活躍した後、独学でエングレービングの技術を学んで、世界的なエングレーバーになられた珍しい経歴の持ち主。

金川氏の作品を見てから彼に会ったら、きっと驚かれると思います。というのは、あの美しく精緻な作品を作り上げるのはきっと少し気難しい「職人」と思いきや、本当に謙虚で、笑顔の絶えない物腰の柔らかい気さくな方だからです。自然と話しが弾み、あっという間に時間が過ぎていきます。

緻密なダイヤルに施された、絵画のような色彩を放つ「七宝」

今回拝見させて頂いた時計が「ミナセ」のアイコンモデル「ファイブウインドウズ」の七宝モデル。「ミナセ」がヨーロッパへ進出のお披露目に特別製作されたモデルです。

七宝とはフランス語で「エマイユ」、英語で「エナメル」とも呼ばれており、金属の下地にガラスの粒の釉薬を、800度前後の高温で焼成することによって美しい彩色を施す技法です。

この七宝モデルのダイヤルには、「ミナセ」の製造拠点である秋田県旧皆瀬村の鳥、花、木であるおしどり・桔梗・いたやかえでが、七宝で表現されています。
使われている七宝の技法は「シャンルベ」と呼ばれ、金属の表面に彫金を施して、そこにエナメルを焼成しています。
金川氏は彫金だけでなく、ご自身で七宝を用いてダイヤルに色付けまで行っているところがすごい!
七宝という技術は非常に難しい技術です。
ガラスの粒の釉薬を約800℃の高温で焼成して色付けするので、理想の色味を出すことがまず難しく、また焼成すると膨張するので、そこも計算しながら焼成後ケースに合わせて削り出さなければなりません。さらに表だけではなく、見えない裏面にも同じように釉薬を焼かないと割れてしまうそうです。
ダイヤルに表現されている美しいブルーのグラデーションも当然塗っているのではなく、濃い色と薄い色のブルーのガラスの釉薬をかけあわせて表現しています。

このような難しい技術であることを踏まえて下の写真を見て頂けますでしょうか?

この時計は金川氏が一度七宝技術を専門学校の体験コーナーで習って、初めてご自身で作成したもの。初めての作品でこの完成度!美しさ!氏の凄さがうかがえます。

日本の伝統技術を生かしたジャパンスタイルに世界が注目

金川氏の作品の特徴といえば日本の伝統技術の融合です。
2年程前からその技術を学ぶために伝統工芸師を師事し、今でもその技術を学び続けているといいます。丁度伺った日も、午後から学びに行かれるとお話されていました。

日本の伝統技術を時計に生かすことは実に難しいこと。
通常壺などに用いる伝統工芸の下地は、最低でも1㎜以上は必要とすることが多いのですが、時計のダイヤルに使われる下地はなんとコンマ4㎜から厚くてもコンマ7㎜!つまり、そのままの伝統技法では腕時計に活かすことはできないのです。
そこで金川氏は専用工具から作成してそれを使用し、作業工程も工具の歯の角度にいたるまで、ご自身で工夫しアレンジして確立されたといいます。
さらに先ほどご紹介した七宝モデルは、ダイヤル表面の七宝の厚さはなんとコンマ2~3㎜。金川氏の緻密で高度な技術をうかがい知ることができます。

例えばこの作品

裏側に見えるのは躍動するウサギの姿。ここでは赤胴をベースに用いて、高肉象嵌(たかにくぞうがん)という伝統技法で純銀のウサギのモチーフをはめ込んでいます。表側は彫金で波の形に抜いて、その下にシェルを入れています。


金川氏は赤胴をベースに用いて煮上げるという日本の伝統的な表面処理方法で、独特の発色を出していきます。

この3つのダイヤルは同じく赤銅に煮上処理を施したもの。
赤銅は煮上を行うと、独特の黒色へと表面が変色します。
そこに彫りを入れて赤銅色を露出させ、際立たせることで模様を表現していきます。よく見ると、一言で黒色といってもそれぞれ微妙に色の風合いが違うことがわかります。

このほかにも古来より日本に伝わる技法を用い、エングレービングと掛け合わせた独自の世界を築きあげている金川氏。

ちなみに金川氏の作品は定価がありません。なぜなら直接買い手の希望をうかがってから、ひとつ一つ唯一無二の作品に仕上げていくからです。

もし金川氏の世界に触れたいなら、ぜひ氏の工房へ足を運んでみてください。
そこでは、金川恵治氏の緻密でアーティスティックなエングレービングの技術を、間近で見学することができます。

また、8月開催予定の三越ワールドウオッチフェアの「ミナセ」ブースにおいても、一部ご紹介させて頂く予定です。


K CRAFTWORK JAPAN

 

コメントを書く
121件のコメントがあります。
ログイン