WORLD WATCH FAIR
2019/04/04
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日本橋三越本店時計コンシェルジュ探訪 ――「SEIKO」雫石高級時計工房を訪ねてーー

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山々の稜線に四方を囲まれ、北方には霊峰岩手山を望むセイコーの高級時計製造の拠点「雫石高級時計工房」。
そのセイコーの「心臓部」ともいえる工房へ見学に行ってきました。

「雫石高級時計工房」は、歯車などの部品製造から完成品の組立まで一貫して行っている盛岡セイコー工業内に設けられた、世界的にも数少ない国内有数の完全マニュファクチュールの専門工房です。

盛岡駅からは車を走らせること約20分。
季節は2月下旬のこと。道路脇の生い茂る木々の群れは残雪に覆われて、冷え込む空気と共に否が応でも緊張感が高まっていきます!

さあ、到着しました。

ここは晴れた日には岩手山も眺められ、車で5分も走れば乳製品で有名な小岩井農場がある自然豊かな地。
この環境はスイスの名門時計ブランドの工房とよく似ています。

いよいよ工房の心臓部に潜入します!

まずエントランスホールにはセイコーの歴史や歴史的なタイムピースなどが展示されている、セイコーミュージアムのような空間です。


左:クレドールの極薄ムーブメント名機「6870」のモックアップが。
右:黄綬褒章も受章されたセイコーの誇る二人の名工桜田守氏と照井清氏の紹介。桜田氏は左の6870をはじめとする薄型ムーブメント68系の組立師、照井氏は日本を代表する彫金師です。

そして次に訪れてたのは工房の心臓部ともいえる、組み立てを行う工房です。

ここには選りすぐりの時計技能士たちが在籍しており、匠の技を駆使した組立作業が手仕事で行われています。
石と接着剤以外のほとんどは自社製造だといいます。また、研磨する際、極薄パーツは反りをなくしながら組み立てるなど、その繊細な技術は感銘します!!

ちなみにここの技能士のみなさんが使用している作業台は、岩手県の伝統的家具「岩谷堂箪笥」製の特注品だそうです。

さあ、ムーブメントの分解組立体験に挑戦です!

使用したムーブメントは9S65という約72時間のロングパワーリザーブを誇る代表的な自動巻ムーブメント。
このムーブメントはガンギ・アンクルという主要パーツを、半導体の製造技術を応用したMEMS(MicroElectroMechanicalSystems)の最新技術で製作したもの。
これらは非常に高精度かつ軽量に仕上げられており、時計の高精度、高耐久性を支える重要な要素です。


左:ローター(回転錐)を取り外した状態。
右:真剣に体験中!!


組立まで終わったら最後に機械により精度チェック!日差+1秒、振角288度、方振り0.4ms、拘束角52度。まずまずです!!

時計の分解と組立は、当然ながら工程の順番が逆なだけですが、実際は組立作業のほうが倍以上時間を要します。
それは時計が単に動けばいいのではなく、1日=24時間、1時間=60分、1分=60秒を正確に刻み続けなければいけないため、この調整が大変デリケートで繊細な作業になるからです。

ほとんどの工程は講師の方の手元を大きく写しながら、丁寧な説明のもとで進むので割と順調ですが、時計の心臓部ともいえるテンプを組み入れる作業は非常に難しくて、何度も失敗を繰り返しました。
この緊張感が続く緻密な作業を一日体験しただけでその疲労感は想像以上のものでした。熟練した技術者の方々の素晴らしい技術、またその集中力の高さに圧倒され、それらを身をもって体感できたことに感謝しています。

時計づくりは、ただの塊であった金属を形成し、削り、磨き、そして一つ一つ意味を持つ部品へと姿を変え、それらは手技を究めた名工たちによって組立・調整・検査までの全行程を行っていく、それは繊細な作業の積み重ねです。
この緻密な作業は日本人が得意とする分野ではありますが、それらを目の当たりにしたことで、日本の「グランドセイコー」がここで生まれて世界へ発信されてゆくことに、言い知れぬ興奮と日本人として誇りを強く感じました。

日本橋三越本店では、毎年8月後半に「ワールドウオッチフェア」という時計の祭典を開催しています。
「ワールドウオッチフェア」においても、このセイコーの技術の高さと素晴らしさを伝える企画を行って、皆様にお伝えしていきたいと思っております。是非期待してください!!

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