今年3月に世界文化社から出版された『母のタンス、娘のセンス 一色采子のきものスタイルBOOK』。女優・一色采子さんがお母様から受け継いだきものや帯を、現代的な感覚で“わたし流”に着こなしたスタイルが紹介されています。インタビュアーは『家庭画報特選 きものSalon』編集長・古谷尚子さんにお願いし、ゲストに女優・一色采子さんをお招きして、お二人のきもの談義の様子を全4回でご紹介します。第1回は、一色采子さんのきものへの思いと出版秘話について伺いました。
第1回「一色采子さんのきものへの思いと『母のタンス、娘のセンス』の出版ヒストリー」
古谷:母譲りのきものをいつも素敵に着こなしていらっしゃる一色采子さん。ご自身の「母のタンス、娘のセンス」という名コピーがきっかけで始まった弊社のWebマガジン「家庭画報.com」での連載が、ついに書籍化されました。今日はこの本のことと、一色さんご自身のことを伺っていきたいと思います。早速ですが、一色さんはいつからきものに興味を持たれていたのでしょうか?
一色:子どもの頃からとにかく“きもの姿”が好きだったんですね。雛人形や、父が画家(故・大山忠作氏)だったので家にはたくさんの画集があって、美人画を見てはうっとりしていました。日本舞踊も4歳から習っていたのできものには馴染みもあり、子どもながらに「きものは綺麗だなあ」と思っていました。
古谷:すばらしい環境ですねー!
一色:今から思うと美術という点で恵まれた環境にいたんだなと思いますね。それに、父が歌舞伎の筋書きの表紙を描いていたので、子供の頃からわけもわからず歌舞伎座に連れて行かれて、その舞台の美しい色彩にうっとりしているような子だったんです。
古谷:きものに限らずファッションとして大事な“色のセンス”は子供の頃から培われたものなのですね。
一色:そうですね。まず日本画や歌舞伎の古典的な色使いを肌で吸収していたというは大きいかもしれません。その後ファッションを楽しむうちに身に付いた現代的な色の感覚を、私なりに取り入れて母のきものを着ている姿を、みなさんが褒めてくださって。笑
何でもそうですが、最初に基礎があったというのは大きいと思います。母譲りのきものを母が着ていたままの合わせ方でそのまま着ると、どうしても一昔前の印象になってしまいますから。
古谷:たとえば帯を新しいものに替えるだけでずいぶん印象が変わりますよね。本の中にも「母の渋い色のきものにオリエンタルな帯を合わせる」「更紗は地味きものの特効薬」「無地感覚の万能帯のススメ」といったコーディネイトのセオリーを分かりやすくご披露いただいてます。この本を読んだきもの初心者の方から、実家のタンスを見直すことから始めますというコメントもたくさん来ています。
一色:きものを着られない理由には、ルールがわからない、着付けができない、価格が高いなど色々な理由があると思いますが、価格が高いという理由については、お母様やご親戚の方など譲られたきものを着ることで解決されますよね。
古谷:ルールについてもお茶席や結婚式など格式がある場面では別ですが、普段のお出かけについては、あまりルールにとらわれる必要はないはずですし。
一色:昔はTシャツにはスニーカーというセオリーでしたが、今はジーンズでもハイヒールを履いてブランド物のバッグをミックスしてもお洒落でセンスを感じられる時代。きものももっと自由に合わせてトライしてみてほしいです。
古谷:きもの姿の人が少ないので、お母様のきものをどう着て良いのかわからないという方も多いようです。
『母のタンス、娘のセンス』より
古谷:最近は街にきもの姿の人が少ないので、お母様のきものをどう着て良いのかわからないという方も多いようで、読者の方から「とってもイメージが湧きやすかったです」といったお話もたくさんいただいています。
一色:嬉しいです!きものはファッションですから、今日は洋服にしようか、きものにしようかしらって、日常着のひとつに加えてほしい。そして、この本がそんなアイディアの一つになったらいいなと思っています。
古谷:まさに「手元にあるきものを自分が着るとしたら、どんな風に着るのか」を考えるときのセオリーを教えてくれる本、ヒントをくれる本、だと思います。それにしても、お母様のきものの数には驚きです!笑
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『母のタンス、娘のセンス』
<目次>
- 母譲りのアイテムをとことん着こなす
- 母のタンスの渋味きもの着こなし術
- 母のタンスのレトロ晴れ着の着こなし術
- 母のタンスの個性派帯の着こなし術
- 娘のセンスで綴るきものダイアリー
- 娘のセンス、アイデア集/福島県二本松市の“私的”プチ観光ガイド
■定価:1,600円+税
■刊行:株式会社世界文化社
古谷 尚子
Naoko Furuya
『家庭画報特選 きものSalon』編集長
1988年株式会社世界文化社入社。Men’sEx編集部でメンズファッションを担当後、書籍編集部でカリスマ美容家IKKOさんの単行本を3冊手がけ、いずれもベストセラーに。『MISS Wedding』『NEXTWEEKEND』の編集長を歴任。現在『きものSalon』の公式通販サイト「和美人百貨店」のプロデュースとバイヤーも兼務するマルチエディター。
一色 采子
Saiko Isshiki
女優
東京都出身。画家の大山忠作を父にもち、幼い頃からさまざまな芸事に触れて育つ。特技は日本舞踊と鼓、三味線、長唄。日本舞踊では坂東流名取として坂東晃祿の名を、鼓では藤舎彩子の名をもつ。主な出演舞台は、「三文オペラ マック・ザ・ナイフ」「リア王」「有頂天団地」「マクベス」「銀座復興」、踊りの才能を生かした『錦絵夏すがた』『風流 吹きよせ踊り』など。また、映像作品への出演も多く、連続テレビ小説「ノンちゃんの夢」、「凛凛と」「あぐり」「あぶない刑事」「相棒」「北アルプス山岳救助隊・紫門一鬼」など。