おしゃべりきものゴコロ。
2020/01/31
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きものSalon古谷尚子編集長と加賀友禅をたずねて金沢へ③

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11点の新作加賀友禅きものから、シチュエーション別のおすすめを古谷編集長に選んでいただきました

「家庭画報特選 きものSalon」古谷尚子編集長と加賀友禅の魅力を探りに金沢へ。今回は古谷編集長に「クルージング」、「結婚式」、「自分にご褒美」という3つのシチュエーション別におすすめの作品をピックアップしていただきました。選定にはファッションとしてきものを提案する編集長ならではの理由が。それでは早速ご紹介してまいります。

【クルージングなど海外でのフォーマルな装いに】
この訪問着をソワレのようにまとって晩餐会で楽しみたい

「黄昏(訪問着)/本間哲哉」


※こちらは小下図です。

古谷編集長「まずはクルージングなど、海外旅行で楽しむならと選んだのが本間先生の訪問着。実は家庭画報でも旅行業務を始めたのですが、クルーズの人気がとても高いんです。読者の方と話をしているとクルーズの話題になることも。注目を浴びている旅のスタイルなんですよね。

船内ではパーティがあるかと思うので、そこで着るならやはり訪問着。お客さまには海外の方もいらっしゃるでしょうし、日本を代表する柄を着たいなと思います。本間さんの茶屋辻は古典柄でありながら、色が現代的なのでプラチナ箔の帯を合わせたらソワレ(晩餐会や舞踏会などに着る夜会服)のように楽しめるのではと思いました」

本間先生「ドレス感覚で着ていただけたらと思っていたので嬉しいです。今回、図案は古典の茶屋辻なので、いつも通りの彩色をしてしまうと面白味がないと思い、加賀五彩からは離れました」

古谷編集長「このオレンジも好きですが、松の紫の色に惹かれます。色の合わせ方がすごく東京好みだなと思いました」

本間先生「松は最初からこの色にと決めていたのですが、他の柄の色を決めようとすると、どうしても加賀五彩に引っ張られてしまうんです」

古谷編集長「長年親しんでいる色彩ですから仕方がないことですよね」

本間先生「でもそれをなんとか軌道修正して、今回は新しい色彩に挑戦しました。色はモダンでありながら淡く儚く、そして胸元は優しい色調に。50代、子育てがひと段落した女性に、自分のための時間を再び持てたときに着て欲しいと思って制作しました」

【友人や親戚の結婚式に招かれたら】
振袖を卒業し、ファースト訪問着を探す女性におすすめしたい

「結(訪問着)/柿本結一」


※こちらは小下図です。

古谷編集長「友人や親戚の結婚式に招かれた30~40代の女性におすすめしたいと思いました。30代になると独身でも結婚式に振袖を着て行ってもよいのかしらと、ためらう女性が多いんです。振袖を卒業したばかりの女性に向けた、ファースト訪問着としてぴったりだなと思いました。
先生がお嬢さまの振袖から発想を得たとおっしゃっていて、なるほどなと思いました」

柿本先生「もともと娘に作った振袖からの発想なので、この訪問着も少し可愛らしさがあると思います」

古谷編集長「ご縁を結ぶ、人とつながるという願いを込めて作られたとのこと、まさに結婚式などお祝いの席にふさわしいですね」

古谷編集長「それに加賀友禅の訪問着なら、華やかながらも落ち着いた雰囲気を持っているので、将来的には子供の七五三や入学式にも着られると思います」

柿本先生「熨斗の中には四季の花や雪輪のほかに、手毬、御所車、菊など吉祥文様を散りばめています。お祝いの席でずっと着ていただけたら嬉しいですね」

【自分へのご褒美】
50代の私の気分に叶った美しい色彩に心奪われました

「雲取り四季文様(訪問着)/鶴見晋史」


※こちらは小下図です。

古谷編集長「見た瞬間、着てみたい!と思いました。自分へのご褒美は鶴見先生の訪問着です」

古谷編集長「なぜこれを自分へのご褒美にしたいのかなと思ったのですが、鶴見先生が20代に向けて作ろうか60代にしようか迷ったとおっしゃっていたのを聞いて、そうかだからその真ん中世代の50代の私が惹かれたんだと思いました」

鶴見先生「作っている最中もずっと迷っていました。地色はこれ以上落ち着くと60代に寄りすぎてしまうので、少し若々しさを残そうと思いこの色にしました。そのおかげで編集長にも気に入っていただけたんですね。よかったです」

古谷編集長「でも先生、20代か60代のどちらかにってブレすぎではありませんか?(笑)」

鶴見先生「実は去年の新作展の作品も同じように迷ったんですよね……。そしたら最初に60代の女性が気に入ってくださって、次に気に入ってくださったのが20代の女性だったんです」

古谷編集長「そうだったのですね。この訪問着も確かに帯を変えるだけでガラリと雰囲気が変わりそうです。そうなると祖母、母、娘の3代で楽しめそうですね。若い女性なら思い切り華やかに、私なら白い帯を合わせたいなと思います。この訪問着に描かれた景色はどこか特別な場所なのでしょうか」

鶴見先生「どこかの具体的な場所というより、私がこれまで見てきた景色から創造した自然の情景です」

古谷編集長「雲取りを少し太めの輪郭で表現されているのが好きです。それと、この松の部分の濃紺も素敵ですね。胸元には桜が描かれていて顔映りもよさそうです」

鶴見先生「雲取りは2種類の線で表現しました。自分で染めもやっているので暈しがうまくいったのが嬉しいです。でもちょっと薄かったかな……」

古谷編集長「まだ迷われているんですか(笑)。とても素敵です!」

大切な節目に、想いを込めた一枚を

古谷編集長「お子さまが成人になって子育てがひと段落したとか、仕事でいいことがあったとか。人生の節目に加賀友禅を買うとしたら、私ならどれにするだろうと思って選ばせていただきました。どれも素晴らしい作品ばかりで、その中から選ぶのはとても大変でした。お題があってほっとしています」

 

三越春のきもの紀行「加賀友禅新作展」はいよいよ2月12日(水)から。それぞれのシチュエーションで着るとしたら、皆さまならどの作品をお選びでしょうか?ぜひ会場にて、素晴らしい作品の中から悩み抜いて選んだ古谷編集長の気持ちを味わっていただけたらと思います。皆さまのお越しをお待ちしております。

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