おしゃべりきものゴコロ。
2020/02/28
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きものSalon古谷尚子編集長と加賀友禅をたずねて金沢へ④

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大人の女性を魅了する、加賀友禅から生まれた“毎田ブルー”

「家庭画報特選 きものSalon」古谷尚子編集長と、加賀友禅の魅力を探りに金沢へ。最終回は、加賀友禅の地で3代続く「加賀友禅 毎田染画工芸」へ伺いました。きものファンの間で“毎田ブルー”と呼ばれている、美しき青の世界をご紹介いたします。

多くのきものファンを魅了する“毎田ブルー”とは

現在、加賀友禅はゆるやかな分業制で手がけられることが多い中で、「加賀友禅 毎田染画工芸」では工房の職人が全工程を担うという一貫制作にこだわっています。中でも初代より、こだわりと美意識によって生み出されてきた青の色彩は“毎田ブルー”と呼ばれ、きものを愛する女性たちを魅了して止みません。
今回は三代目・毎田仁嗣先生ときものSalon古谷尚子編集長に「毎田ブルーの魅力」や、「大人の女性にふさわしいきもの」についてお話をしていただきました。

初代から受け継ぐ伝統と技術と、そして美しい青の世界

古谷尚子編集長(以下、古谷編集長)「今日はよろしくお願いします。早速ですが毎田さんの工房と言えば“毎田ブルー”です。伝統的な加賀五彩の藍とは少し雰囲気が異なりますよね」

毎田仁嗣先生(以下、毎田先生)「よろしくお願いします。そうですね。うちの工房では単色で藍を使うことはほとんどなく、何種類もの青を使って表現します。この訪問着には15色使っていて、さらに色の濃度を3~6段階に分けています。染料は市販品なのですが、胡粉(染めの仕上げなどに用いる白色顔料。貝類を焼いて粉末にしたもの)は工房で作っているんですよ。胡粉の上から彩色すると、白生地の上からの彩色とは異なるニュアンスが生まれるんです」

古谷編集長「青だけで15色もお使いなのですか。さらに濃淡や胡粉によって色にニュアンスを出したり、暈しを加えたり……。さまざまな技術とこだわりによって、表情豊かな“毎田ブルー”が生まれるんですね。
毎田さんとはお父さまである健治さんの右腕として活動されていたころにお会いしています」

毎田先生「糊置きや地染めなど、すべての行程を学んでいた時期でしたね。23歳で工房に入り、7年目で落款登録をして制作を始めたのですが、実際に作家として独立したのは10年目くらいから。工房に入って15年ほど経って、ようやく親父に認められたような気がします」

三代目・毎田仁嗣先生のこだわりとは

古谷編集長「毎田さんの作品は、色彩同様に従来の加賀友禅を払拭するデザインですよね。どのようにしてデザインを考えているのでしょうか」

毎田先生「何気ない日常から美しい情景を探すことが多いですね。ギャラリーに飾ってあるきものは、風で揺れる水面の美しさを表現したものです。一緒に描いているアガパンサスという花は夏に咲くので、単衣の訪問着として仕立てました。常にカメラを持ち歩き、モチーフになりそうな被写体を見つけては写真を撮っています」

毎田先生「ありのままの景色を描くのではなく、少し抽象的に表現しています。ただやはり、加賀友禅の世界観は大切にしたいので、距離が離れ過ぎないように気を付けています。編集長、工房で制作中のこの柄、何かわかりますか?」

古谷編集長「綺麗な色彩ですね。柄は幾何学模様に見えますが……扇でしょうか?」

毎田先生「実は松なんです。わざと松に見えないようにしています。編集長が仰ったように扇にも見えるようにしました」

古谷編集長「幾何学模様に見えて、実は昔からあるおめでたい松の柄だなんて。一見しただけでは分からないお祝いの表現方法ってさりげなくていいですね」

古谷編集長「やはり、先代から続く“毎田ブルー”を受け継がれていくのでしょうか」

毎田先生「祖父の代から青の美しさを見て育ってきましたから、私も好きな色なのですが、独り立ちしたころは『親父の真似だ』とか、『廉価版だ』と言われたこともあって、しばらく青を使わなかった時期もありました。でもやはり自分の好きな色なのに、使わないのはおかしいと思い直し、気にせずに使うことにしたんです。すると次第に『毎田さんにはやはりブルーで作って欲しい』とリクエストをいただくことが多くなりました。今では私自身の色として青を使っています」

今、ファッション感度の高い大人の女性がきものの魅力に気づき始めている

古谷編集長「最近、ファッション業界に勤める同年代の友人から、初めに買うとしたらどんなきものを買えばよいかと相談を受けることが増えています。
ハイブランドのプレスとして活躍する彼女たちは外国の方々と接することも多く、海外でのパーティに出席する機会もあって、そこできものを着たいと言うんです。『自社のブランドを着なくてもいいの?』と聞くと、『いくら頑張っても日本人の体型では同じドレスを着て彼女たちの隣に並ぶのは限界があるし、かえってきものの方が喜ばれるの』と言います」

毎田先生「なるほど。もともとドレスは欧米の女性を着飾るためのものですからね。一方、きものは日本の女性を装うためのものです」

古谷編集長「そうなんです。彼女たちは、世界で通用する美しさを求めていて、そのためにはきものが適していると気がついたんだなと思いました。着まわせるとかお買い得ということではなく、特別な場に最高の自分でいられる究極の一枚を探しているんですよね」

毎田先生「最先端のファッション業界にいる女性が、ドレスよりもきものを選んでくださっているなんて嬉しいお話ですね」

古谷編集長「洋服で生活する今の時代、きものに着まわしや使い勝手のよさを求める女性がいる一方で、自分を美しく見せるための一枚を探す女性も一定数いるのではないでしょうか。
加賀友禅には日本の雅な世界観が凝縮されています。金彩も刺繍もないおかげで持ち運びもスムーズ。海外のパーティには最適だと思っています」

毎田先生「祖父の代からきものはファッションであるという考えです。私も時代の空気感を取り入れて作っていくことは大切だと思っています」

古谷編集長「悠久なる加賀友禅の歴史と先々代から受け継がれる青の美学、さらに現代に寄り添った色彩感覚と抽象的なデザインで表現される毎田さんのきものは、ファッションを知り尽くした女性を満足させる要素がたくさん詰まっていると思います。これからのご活躍も応援しています。今日はありがとうございました」

 

毎田仁嗣(まいだ・ひとし)

昭和49年金沢生まれ。23歳の時、父である毎田健治氏に師事。平成12年加賀友禅技術保存会展 新人賞受賞。その後、数々の賞を受賞。平成27年星野リゾート界加賀の室内装飾を制作。また平成28年にはアメリカフロリダ州ウォルトディズニーワールドのユニクロメインエントランスのディスプレイを制作するなど、活躍する分野を広げ続けている。祖父は毎田仁郎氏。

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