2020年12月金沢にて、きものと帯を製作いただいた10名の加賀友禅作家の先生方にお集まりいただき、新作お披露目会を開催しました。
染色意匠の美が宿る新作の訪問着をご紹介
今回は2月10日(水)より開催の「加賀友禅新作展~夢みる加賀友禅~」でお披露目の訪問着をご紹介します。それぞれの作品に込められた想いとは……。今企画を手がけたバイヤー・櫛引はながナビゲートします。
「作品創りを通し私が感じた加賀友禅の奥深さに加え、文様へのこだわりや彩色の強弱や色合いのこだわりなど、それぞれの先生方の世界観をお伝え出来ればと思います。ニューノーマルを過ごす日々で、たとえ着る機会が減ったとしても、美しき訪問着を通し、いつか華やかなきものを着て楽しいお出かけができたら……と、夢をみ続けて欲しいと願っています」
優雅な大人ピンクには西洋の香りも。着席スタイルのパーティを華やかに
「奏(訪問着)/毎田仁嗣」
「毎田仁嗣先生の工房と言えば、“毎田ブルー”と呼ばれる青の彩色が有名ですが、今年はあえてピンクに挑戦していただきました。少し紫に近い大人ピンクの訪問着です。
花は山芍薬に桔梗を描いていただきました。普段訪問着の構図では流れを意識することが多いそうですが、今回の作品はとてもリズミカルな構図と彩色で、西洋の香りも漂います。春と秋のモチーフが入っているので、季節を問わずに着ていただけると思います。
パーティでは密を避けるため、立食ではなく着席スタイルが多くなっているようです。着席した姿でも華やかに装えるように、胸元にも艶やかな彩りの花を描いていただきました」
可憐に咲き誇る花々を身にまとう、至福の訪れを夢みて
「十二花衣(訪問着)/菊田宏幸」
新作の原案となった訪問着の写真
「今回の新作の原案となった、過去に作られた訪問着の写真を見たとき、とても華やかなその世界観に私自身心が躍り、ぜひ三越のお客さまへご紹介したいと思い、三越好みにアレンジしていただきました。
加賀友禅で表現される花数は、3~4種が一般的だそうですが、この訪問着には12種類もの花が描かれています。先生は、うれしくて特別な日に、たくさんの花を身にまとう幸せを味わってほしいと話してくれました。白を基調にした花によって生まれた余白と、草花がすっと上にのびる構図によって、軽やかで洗練された雰囲気に仕上がりました。 また、地色はレモンイエローなので、非常に肌馴染みもよいかと思います。華やかで、奥ゆかしさもある訪問着、ご婚礼のお支度にもいかがでしょう」
更紗を加賀友禅の世界で表現したモダンな訪問着
「更紗宝彩(訪問着)/佐藤賢一」
「淡い色の優美な草花模様が人気の佐藤先生ですが、今年は濃い地の訪問着に挑戦していただきました。抽象的な更紗柄に柔らかさを感じるのは、佐藤先生の感性と、加賀友禅ならではの彩色や暈しの技法によるものかと思います。
地色は加賀五彩の藍とは異なる、暗い青緑色を帯びた鉄紺のような深みのある色。佐藤先生が「令和の藍」と命名していました。
すでに加賀友禅をお持ちで、二枚目、三枚目をお探しのお客さまに満足していただける訪問着ではないでしょうか。シックにモダンに、パーティなどで楽しんでいただけたらと思います」
淡い色の四季花を身にまとう、洗練されたニュアンスカラースタイル
「四季草花(訪問着)/田嶋秀之」
「地色は優しい大人ピンクで、袖や裾には流れのきれいな淡い水色のぼかしが入り、グラデーションに奥行きを感じます。また四季花には多くの色を使っていますが、決して華美になりすぎず、落ち着いた雰囲気なのは、多くの色をあえて少ない色に見せる先生の技法によるもの。華やかながらも上品な印象が残るよう、彩色にこだわっているからです。
また、袖から肩に描かれた流線によって腕がすらりとスタイルよく見えるようにデザインしてくださいました。
柄自体も細かいので、153cmの私が着てもすっきりとした印象に。体型も世代も問わず、あらゆる方々に夢をみせてくれる訪問着だと思います」
東京と自然の情景を身にまとい、いつかきっとの夢をみる
「しだれ桜に東京風景(訪問着)/鶴見晋史」
「鶴見先生とは最初の打ち合わせで、明るい気持ちになれる訪問着を作りましょうという話になり、東京の景色をテーマに制作してもらいました。描かれた街を、以前のように自由にお出かけができますようにという願いが込められています」
小下図。ここから実際に着ることを考え、柄の配置などを工夫していきます。
「下前には都庁ものぞく新宿のビル群を、上前には日本橋が描かれ、裾には皇居の松、肩から裾にかけては銀座の柳と日本橋の桜が描かれています。実際にお召しいただくと、ビルや橋などの建造物は淡い色彩なので遠景に感じ、桜や松などが主役として浮かび上がって見えます。
海外の方とのコミュニケーションにもなりそうな訪問着で、日本橋三越本店オリジナルならではの贅沢な遊び心を感じる作品に仕上がっています。他ではなかなかお見かけしない、一期一会の作品かと思います」
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三越春のきもの紀行
2021年 三越好み 加賀友禅新作展 ~夢見る加賀友禅~
場所:日本橋三越本店 本館4階呉服フロア
会期:2021年2月10日(水)~2月23日(火・祝)
時間:10:00~19:00
※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更になる場合がございます。
毎田仁嗣先生による、加賀友禅マスクオーダー
きものにも映える加賀友禅の彩色を施したマスクの受注会を開催いたします。お好みの色柄をお選びいただき、毎田先生の工房にて手描友禅で製作後、お渡しいたします。
期間:2月10日(水)~2月23日(火・祝)
価格:18000円+税 生地:表地 絹100% 裏地 :ポリエステル100%
納期:約1か月半
※本マスクはウイルス感染やアレルギーの発症を完全に防ぐものではありません。エチケット用としてご使用ください。