今年は、お客さまに寄り添った付下げと染なごや帯もご用意しました
前回につづき、2月10日(水)より開催の「加賀友禅新作展~夢みる加賀友禅~」でお披露目の新作をご紹介します。それぞれの作品に込められた想いとは……。今企画を手がけたバイヤー・櫛引はながナビゲートします。
「今回は付下げと染なごや帯をご紹介します。基本的に付下げの八掛は、別布でお仕立てをしますが、今回は共布の八掛をご用意。すべての袖口と上前おくみ裏にワンポイントの彩色が入っています。細部にまで夢を見ていただけると思います。
また染なごや帯は、きものはじめの方にもおすすめしたい万能柄や、季節を堪能できる柄、そして他ではあまり見かけない通好みの柄など、より多くの皆さまに満足いただける作品を用意しました」
「そより(付下げ・左)、クレマチス(染なごや帯・右)/柿本結一」
「お子さまの入学式や卒業式などのお付き添い着として提案したいのが、柿本先生の付下げです。
柄には柔らかな色彩の流線で、穏やかに吹く風を表現していただきました。加賀友禅の伝統的な彩色に暈しを入れ、現代に寄り添った透明感のある雰囲気に仕上がっています。
お祝いの席だけではなく、ホテルランチなど、少しおしゃれをして出かけるシーンにも活躍の一枚です。四季の花が描かれているので、季節を問わずに着ていただけます」
実際にきものに合わせてみるとこんなイメージに。多くのきものに合わせていただきやすい帯になっています。
「染め帯は表と裏から見たクレマチスの花を抽象化し、交互に配置しています。こだわったのが、三角形のバランス。鋭利になっては加賀友禅の優雅な雰囲気とかけ離れてしまうし、大き過ぎるとお太鼓の美しさに影響が出ます。加賀友禅らしさと着る方の魅力を引き出す絶妙なバランスにしていただきました。クレマチスは意匠化されていて、かつ多くの種類が四季を通して咲く花ですので季節を問わずお楽しみください」
「四君子(付下げ・左)、ジャスミン(染なごや帯・右)/太田昌伸」
「着る季節を選ばない吉祥文様の四君子(蘭、竹、菊、梅)の付下げです。お茶席にも重宝すると思います。
すっきりした図案なので、どんな帯とも相性がよく、万能の一枚と言えるのではないでしょうか。どこへ行っても失礼のない柄ですので、これさえあれば大丈夫、という安心感も。きものはじめの方にもおすすめです。帯締め、帯揚げなどの小物でドレスアップしていく変化も楽しんでいただけたらと思います」
「染なごや帯は、太田先生が制作した過去の訪問着の図案を元に制作していただきました。加賀友禅らしさを帯でも楽しんでいただけるよう、“きものらしい帯”がテーマです。描かれているジャスミンは、開花時期が3~5月、7~11月と種類によってさまざまなので、袷の時期はずっと楽しんでいただくことができます。
無地の紬などに合わせ、背中いっぱいに加賀友禅を楽しむ、帯が主役の装いを楽しめるかと思います」
「ブーケ(付下げ・左)、兼六園(染なごや帯・右)/濱田泰史」
「濱田先生には、澄んだ水色の地色に、ブーケを描いていただきました。ブーケにはカトレアや胡蝶蘭、かすみ草が描かれ、清潔感のある柔らかな雰囲気です。心から可愛い!と思っていただける一枚ではないでしょうか。お子さまの七五三などお祝い事が控えている、若いお母さま世代にもおすすめしたい、ファッショナブルな付下げです」
本図案を帯地へ。彩色が完了した段階です。
「染なごや帯は金沢の観光スポットであり、日本三名園でもある兼六園を描いていただきました。小島や松など、兼六園の要素をぎゅっと詰め込んだ、まるで一枚の絵画のような作品。前柄には、一方に梅と兼六園を象徴する徽軫灯籠(ことじとうろう)を、もう一方には松が描かれているので、加賀友禅をたっぷりと味わえる帯になったかと思います。季節にこだわらず、街歩きや美術館などのお出かけにいかがでしょう」
「松竹梅(付下げ・左)、牡丹(染なごや帯・右)/本間哲哉」
「本間先生には、慶事・吉祥の象徴とされ、お茶席でも重宝する松竹梅の付下げをお願いしました。地色は淡いベージュに近い黄色で、肌写りもよく品があります。また彩色には加賀五彩(藍・えんじ・草・黄土・古代紫)が使われ、不変の優美な世界を楽しんでいただけると思います。
大きなお茶会はまだ少ないと聞きますが、再開する日を夢みてお仕立ていただいてはいかがでしょう」
今回の染なごや帯のイメージになった、先生が過去に制作した訪問着の写真資料。
「染なごや帯には、訪問着で描かれる、加賀友禅らしい透明感のある牡丹を、そのまま帯で表現できたら素敵ではないかと考え、本間先生に制作を依頼いたしました。地色は淡いミントグリーンをイメージし、現代的な感覚に仕上げていただきました。白い牡丹には、ピンクの挿し色でほんのりと艶やかさが加わっています。葉は青と緑のグラデーションで描かれ、より一層白い牡丹の透明感が際立っています。彩色だけで透明感やきらめきを表す加賀友禅に、唯一無二の世界観を改めて感じました」
「再重逢(付下げ・左)、まほろば(染なごや帯・右)/志々目哲也」
「志々目先生は、二代 由水十久先生の元で修行され、2017年に独立された、新進気鋭の加賀友禅作家です。今回の付下げは、コロナ禍の希望となる一枚にしたいという願いを込めたとおっしゃっていました。
原寸大の本図案では、身長を問わず正座をした時でも美しい柄が膝の上に出るようにと、図案を身体に巻きながら微調整して決めていただきました。枝の曲線にもこだわっていただきました。
季節を問わず着ていただけるすっきりとシックな文様に、アイスグレーの地色なので、幅広い年齢層に好んでいただけるのではないでしょうか」
糊置きの行程中。とくに志々目先生の作品は繊細な線が多く描かれています。
「染なごや帯には、夜明けの船出のシーンが描かれていて、これからの未来に希望が込められています。
左下に描かれた花をお太鼓に出していただくと素敵なのですが、そうすると空に描かれた葉や渡り鳥はすっかり見えなくなります。それでも丁寧に贅沢に描き切ってくださいました。生垣など驚くほどの緻密な描写に、彩色だけで表現する加賀友禅の境地を見せたいという熱い想いがあふれた作品になりました。由水先生の緻密な糸目の糊置きを継承されながら独自の世界観を展開していただきました」
掲載の作品に関して、新作展に関してのご質問はこちらから!
三越春のきもの紀行
2021年 三越好み 加賀友禅新作展 ~夢見る加賀友禅~
場所:日本橋三越本店 本館4階呉服フロア
会期:2021年2月10日(水)~2月23日(火・祝)
時間:10:00~19:00
※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更になる場合がございます。
毎田仁嗣先生による、加賀友禅マスクオーダー
きものにも映える加賀友禅の彩色を施したマスクの受注会を開催いたします。お好みの色柄をお選びいただき、毎田先生の工房にて手描友禅で製作後、お渡しいたします。
期間:2月10日(水)~2月23日(火・祝)
価格:18000円+税 生地:表地 絹100% 裏地 :ポリエステル100%
納期:約1か月半
※本マスクはウイルス感染やアレルギーの発症を完全に防ぐものではありません。エチケット用としてご使用ください。