時計コレクターに限らず、時計の魅力にはまった人々を歯車族と名付けました。
時計界の博士と呼ばれる広田雅将が、歯車族をゲストに招いて、いま注目の時計や歯車族がいま思うことをとことん語り合っていただきます。
第1回 デジタルマーケッターは機械式時計に何故惹かれたか
広田: 石井さんがご専門であるデジタルマーケティングと機械式時計は対極のような存在ですが、そこに興味をお持ちというのがとても面白いと思いました。そのきっかけとは何だったのでしょう。
石井: 私、カメラも趣味で、壊れたジャンク品を買ってきては直すなんてことをしていました。メカに興味があり、時計もそのひとつだったんです。初めて自分で時計を買ったのは中学生の頃、セイコー5スポーツ*です。大学時代にはテクノスやラドーを手に入れました。
広田: 60年代後半から70年代ですね。
石井: それからクオーツが出てきて私も使ってはみたものの、やっぱり面白くない。結局、精度を追いかけてもしょうがないという結論に至ったんです。むしろ機械式ムーブメントには精度を調整するためにチラネジなんかの工夫があり、ますます中味に興味を持つようになったわけです。
広田: いよいよ歯車族としての目覚めですね(笑)
石井: 社会人になり、ロレックスを買いました。オイスターパーペチュアルデイトジャストのエンジンターンドベゼル*です。
広田: 僕も以前持っていましたけど、いい時計でしたね。
石井: ところがロレックスはみんなが知っていて、なんだか気に入らない。天の邪鬼ですね。それで自分はムーブメントで時計を選ぼうと思ったわけです。そのなかで念願のチラネジつきで選んだのがジャガー・ルクルトのレベルソ・デュオ*でした。
広田: いいですね、これ。ベースのキャリバー822は名機です。
石井: 中味を見ることはできなくても、想像するだけで楽しい。
広田: 萌えてますねぇ(笑)。
石井: 技術は進歩し、ジャイロマックスや通常のテンプでも精度は出ますが、それでもチラネジに様式美を感じます。また道具としての進化にも関心があります。たとえばオメガはブレスレットのつなぎがピンで気に入らなかったのですが、いまはネジに変わり、細部が改良されています。そういうところにも惹かれちゃうんですよ。
広田: 進化を続けているから興味もつきない。
石井: それでまた欲しくなっちゃう(笑)。
- あなたがぐっとくる時計のチャームポイントはどこですか?
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ここで、日本橋三越本店 特選宝飾雑貨営業部 時計サロン 北澤 真吾さんからのTALKテーマです!
お二人の掛け合い、興味深いですね。
僕はシースルーバックの裏面から見える機械を見て、職人の製作工程や、ものづくりへの想い・ストーリーなんかを頭に思い浮かべて、一人悦に入ったりします。
皆さんがぐっとくる時計のチャームポイントはどこですか?
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広田雅将
Masayuki Hirota
時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長
1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。
石井龍夫
Tatsuo Ishii
花王デジタルマーケティングセンター シニアフェロー
1980年花王株式会社に入社、販売部門を経験した後、本社事業部門でブランドマーケティング業務に14年間従事。その後、花王のweb活用の戦略立案と企画運営に携り、2014年にデジタルマーケティングセンターを設立し、2016年12月の退任までセンター長として花王のデジタルマーケティング活動を統括。現在は、デジタルマーケティングセンターのシニアフェローを務めている。また、社外では、日本マーケティング協会のマーケティングマイスターやデジタルメディア広告電通賞の審査委員長などの職務も兼任。