歯車族バトン
2017/11/22
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デジタルと機械式時計にハマった、 男の物語4

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第4回 良き歯車族となるための心得とは

広田: 持論として時計を買う時には3つの要素があり、それは“良い悪い”“好き嫌い”“似合う似合わない”だと思っています。一般的な良い悪いから一歩踏み込んで好き嫌いで選ぶ人は少ないですし、その上で似合うかどうかで判断できる人って多くはいないと思うんですよね。

石井: 自分に似合うかっていうのは気にします。用途やシーンにふさわしいか、ファッション的には、時計やストラップの色がベルトや靴と統一感があるか。その中であまり高価な時計だとそれに見合った服装が思いつかない。そんな意識が強くあります。

広田: ご自身に規範を設けて、その中で楽しむってことを意図的にやっていらっしゃる。

石井: そうですね。高級時計の一点豪華もいいけれど、なんかバランスが合わないというか。どんなに憧れていてもサラリーマンがする時計じゃないでしょって思ってしまう。これまで使った金額を考えれば買えるかもしれないんですけど、でも買わない。

広田: それは何故ですか。

石井: やっぱり、それをつけている自分の姿が想像つかないからでしょうね。

広田: その気持ちは僕もわかります。自分とは違うっていう感覚。

石井: 逆にパルミジャーニ・フルリエなんかは、神の手を持つ修復師って聞くとそれだけで欲しくなってしまって。でも周囲からはそっけない時計をしているねって言われ、ブランド名を言ってもそれって何ですかって感じ(笑)。リセールを考えると絶対買えないですよね。

広田: もちろん時計は資産価値があり、でもリセールを考えちゃうと審美眼というか、自分のものを見る目が衰えるような気がします。

石井: 結局リセールは中身って関係ないじゃないですか。基本的には周囲の評価であり、だとしたらリセールのために時計を買うのじゃなくて、やっぱり自分が腕にして嬉しいという自己満足を崩したくないですね。

広田: コレクターではなく、あくまで使って楽しむ。

石井: そうですね。だから本数もできれば1ダースを上限に、増やしたいとは思っていないんです。使用頻度を落とさず、欲しいものがあったら何を処分しようかと考えます。処分できないなら、もう買わない(笑)。でもなんか欲しくなっちゃう!

広田: 社会生活を営みながら趣味を楽しむっていうのは、大人にとって命題・課題だと思いますね。僕なんかは完全に常軌を逸している(笑)

石井: やっぱり私はサラリーマンなので、自分で上限というか枠をはめないと趣味に溺れるわけにはいかないわけですよ。この範囲内で追いかけて楽しもうっていうことになるし、ストーリーを求めるのであれば、別に数を増やす必要もないですし。

広田: そうですね、コンプリートとか考えなくていいですものね。

石井: グロスのバジェットの中で最大限どう楽しむかっていう、その全体の設計がとりあえずマーケッターとしてひとつの楽しみ方だとも思いますよ。

 

今回で、花王デジタルマーケティングセンター 前センター長 石井龍夫氏との歯車族対談は終了です。
次回は、楽天株式会社 副社長執行役員CRO 有馬 誠氏との歯車族対談をご紹介します。

 

今回の対談に関してのご意見・ご質問をお待ちしております。ぜひコメント欄からご投稿ください。

 

広田雅将さん

広田雅将
Masayuki Hirota

時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長

1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。

石井龍夫さん

石井龍夫
Tatsuo Ishii

花王デジタルマーケティングセンター シニアフェロー

1980年花王株式会社に入社、販売部門を経験した後、本社事業部門でブランドマーケティング業務に14年間従事。その後、花王のweb活用の戦略立案と企画運営に携り、2014年にデジタルマーケティングセンターを設立し、2016年12月の退任までセンター長として花王のデジタルマーケティング活動を統括。現在は、デジタルマーケティングセンターのシニアフェローを務めている。また、社外では、日本マーケティング協会のマーケティングマイスターやデジタルメディア広告電通賞の審査委員長などの職務も兼任。

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