第1回 人生の節目を飾った、歯車遍歴
広田: 有馬さんはいつ頃から時計がお好きだったんですか。
有馬: 中学1年で初めて時計を買ってもらってからずっと好きでしたね。シチズンのクリスタルセブンだったと思います。そして結婚時、義理の父からブルガリのディアゴノを贈られ、愛用しました。そして30歳半ばでオメガの、やや小振りな自動巻き式スピードマスターを買いました。
広田: それは何かの記念で買われたとか?
有馬: そうですね、ヤフー入社時で今でも愛用しています。とても気に入っていて、長女が結婚した後、義理の息子にも同じものを贈ったほど。「俺の人生はこれを着けた頃から良くなったんだ、お前もどうだ」みたいな感じで(笑)
広田: 時計は人生の節目の時に買うことが多いし、開運祈願みたいなものでもありますね。
有馬: そうかもしれません。
広田: 社会的な立場が上がっていくにつれて、時計の趣味も広がっていったのですか。
有馬: 立場ということではないと思いますが、「昔は買えなかったものが今は買える!」とか、新しい時計を買う度に思いはしますね。やっぱりパテック フィリップを初めて買った時は感無量でした。
広田: それはいつ頃ですか?
有馬: 50歳を過ぎ、その頃アメリカ人の上司がパテックをしていたんですよ。ジーンズを穿いて、ゴールドケースの革ベルトで。複雑系だったと思いますが、それがすごくかっこよかったんです。
広田: それは憧れますよね。
有馬: そうですね、さりげなかったし。見栄やステイタスという感じが全然なくて、「ああ、こういうのってかっこいいな」と思いました。僕自身ペンダントや指輪をつけるにはちょっと抵抗があって、唯一の飾りが時計という感じなんです。
広田: モデルは何を選ばれたんですか?
有馬: 海外出張も多かったので、ワールドタイマーにしました。今でも海外出張の時は着けています。一目で時差が分かりますしね。
広田: いい選択ですね。経営者やビジネスマンはステイタスシンボルとして買われる方が多いけれど、有馬さんはそうではなく、本当に好きという感じが伝わってきます。
有馬: 究極の自己満足みたいな気がしますけれど(笑)。
広田: 意外というと失礼なんですが、とてもプロフェッショナルな考え方をお持ちなんだろうと思いました。そういう方は持ち物で自分を飾る必要がない。
有馬: 確かに時計で何かを示そうとはあまり思わないですね。どちらかというと自分らしさは仕事で示すべきだし、物で代弁する気持ちはないかもしれません。
今回の対談に関してのご意見・ご質問をお待ちしております。ぜひコメント欄からご投稿ください。
広田 雅将
Masayuki Hirota
時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長
1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。
有馬 誠 Makoto Arima
楽天株式会社 副社長執行役員兼 CRO
1956年大阪生まれ。京都大学工学部卒業。倉敷紡績(クラボウ)、リクルートを経て、1996年ヤフー株式会社の第一号社員として立ち上げに参画、コンテンツの立ち上げやオンライン広告マーケットの創出に寄与し、インターネット広告ビジネスの中心人物として活躍。 2010年グーグル株式会社入社。グーグル日本法人専務を経て代表取締役に就任。2017年より楽天株式会社 副社長執行役員兼CROおよび楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任し現在に至る。著書には『ギャップはチャンスだ!』(日経BP社)『転職メソッド』(しののめ出版)がある。