第2回 時には融通無碍も時計選びの楽しみ
広田: 僕のIT系の知り合いもパテック フィリップをつけていますが、お仕事柄でアナログの機械式時計をつけているのはちょっと意外な感じもします。
有馬: ははは。でもスマートウォッチとかは持っていないですね。やっぱりちょっと違うのを持ちたいでしょ。
広田: 同じだから嫌というのは同感です。
有馬: 僕はそうですね。そもそも常にスマホを持っているので(笑)。
広田: 有馬さんは時計以外にもゴルフであったり、他にも多くの趣味をお持ちです。趣味を持っていてよかったなと思う点はどこにありますか。
有馬: ゴルフは交流が広がるとか、そういう面もありますが、やっぱり真剣にやって上手くなればすごく嬉しいですよね。この喜びが味わえないのはちょっとつまらない。時計も同じで、何年かに一度は新しいのが欲しくなります。その時は1年か2年かけて調べますし、迷う。でもその間がすごく楽しいですよね(笑)。そういう楽しみは、趣味と共通するし、あってよかったなと思いますね。
広田: だから選ばれた時計はいずれも外してない(笑)。
有馬: 似たようなモデルを調べますよね。するとこっちの方がいいのかなとか(笑)。要するに、視野が広がるんだと思うんですけれど。例外はパテック フィリップの175周年記念モデルです。限定だったので即買いでしたが、結果として一番よく使っていますね。
広田: よい意味で慎重であり、果断でもありますね。それはビジネスにも通じますか?
有馬: ははは。それはないでしょうね。それに意外と適当なんです。最近ついに初ロレックスを手に入れたんです。サブマリーナ*が昔から気になっていたけれど、でもロレックスだからなぁという思いがあって。
広田: みんながしている時計はあんまりしたくない(笑)。
有馬: でも何かの時に誰かがしているのを見て「ああ、やっぱりいいなぁ」と思って。カジュアルの時もいいし、もう15年以上気になっているんだから、多分後悔しないだろうと(笑)。
広田: 思いは本物という決断ですね。
有馬: ところが買いに行ったら、ディープシー*が気に入ってそっちを買っちゃいました。文字盤が一緒だし、分厚くてかっこいい。防水3900mまでなんて絶対潜らないですけれど(笑)。あれほど長い間考えたのにね。
広田: ありゃ。変化球を入れますね(笑)。
有馬: 結局、ロレックスでも人が持っていないものを選んじゃったし(笑)。ひょっとしたらそうかもしれませんね。
広田: 人となりが見える選び方が僕はすごく面白いと思いますよ。
有馬: 今の仕事は広告関係ですが、やっぱり楽天でしかできないものを作りたいという思いがすごく強いですね。他にはないものを作るという。僕はもともと営業出身なので、一番売りやすいのは“ここにしかないもの”ということがわかっています。一番売りやすいし、それが結果として売り上げも一番上がる。そういうこだわりはすごくありますね。
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広田雅将
Masayuki Hirota
時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長
1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。
有馬 誠 Makoto Arima
楽天株式会社 副社長執行役員兼 CRO
1956年大阪生まれ。京都大学工学部卒業。倉敷紡績(クラボウ)、リクルートを経て、1996年ヤフー株式会社の第一号社員として立ち上げに参画、コンテンツの立ち上げやオンライン広告マーケットの創出に寄与し、インターネット広告ビジネスの中心人物として活躍。 2010年グーグル株式会社入社。グーグル日本法人専務を経て代表取締役に就任。2017年より楽天株式会社 副社長執行役員兼CROおよび楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任し現在に至る。著書には『ギャップはチャンスだ!』(日経BP社)『転職メソッド』(しののめ出版)がある。