歯車族バトン
2018/08/13
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日本橋店主の語る「時代を刻み、時を愛する、プロが選んだこの時計」- 伝統の味わいとともに、時を握る

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繁乃鮨 佐久間一郎さん

歴史が息づくとともに、時代の感性を受け入れ、さらに洗練に磨きをかける街、日本橋。この地に店を構え、伝統を受け継ぐ名店店主の愛する時計とは? そこに込められた時への思いとは? 時計ジャーナリストの柴田充さんがお話を伺います。

第1回 老舗寿司店三代目の語る「伝統の味わいとともに、時を握る」

柴田:こうして私服でお目にかかると、店内でお寿司を握っている時のいでたちとはすっかり変わってしまって、驚きました。

佐久間:よく言われますよ、日にも焼けてるし(笑)。でもそのギャップが面白いって。

柴田:時計については、もともとお好きだったんですか。


佐久間氏が永く愛用している、ロレックスのデイトジャスト。

佐久間:それほど興味はなかったんですが、二十歳の時に家族旅行でハワイに行き、祖母にロレックスのデイトジャストを買ってもらったのがきっかけですね。それ以降、ブレゲのマリーンやロレックスのデイトナを購入しました。

柴田:スポーツタイプが好みですか。

佐久間:そうですね。ロレックスのヨットマスターも持っていたかな。頑丈なのが好きなんですよ。

柴田:時計を購入されるのはどういうタイミングで?


左はフランク・ミュラーのトノウ カーベックス マスターバンカー。右はヴァルカンのプレジデンツウオッチコレクション

佐久間:もう一目惚れです。フランク ミュラーなんかも今まで持っていないスタイルで、ちょっとエレガントなところが気になって。「これいいな」と思って購入しちゃいました。興味を持ったら、まず見に行きます。そこで何か呼び寄せるものがあれば買うし。でも基本的には見に行くと買っちゃうから怖いんですよ(笑)。

柴田:うかつに時計店を覗けませんね(笑)。でもそれだけ好きでも仕事中は着けられないのが残念ですね。

佐久間:でもだからこそいいものをと思うのかもしれません。休みの日に「この気分だな」とか「今日は暑いからこれだな」とか選ぶのも楽しいし。

柴田:どちらかというとファッションに近い感覚というか。気分転換だったり、気持ちを盛り上げてくれるものですね。

佐久間:たとえば飲みに行って時計をチラチラ見ていたら、傍目には感じ悪く見えるじゃないですか。でも実際には時間ではなく、時計自体を見ているんです。自分の時計を見ながら「格好いいな」とウットリして。もうそれだけで飲める (笑)。

柴田:目に浮かびますよ(笑)。

佐久間:本当にいいものは自分のステップアップにもつながると思います。次はこういう時計が欲しいと思えば、さらに頑張らなければいけないし。我々はバブル世代なので、時計やクルマなどいいものを手にしたいという気持ちはまだまだ強くあります。そのために頑張って仕事をしようと。

柴田:そうした本物へのこだわりというのは、仕事にも通じるのではないでしょうか。高級というひとつの概念であり、形のないものをお客様に提供する立場として。

佐久間:そうかもしれませんね。時計に関していえば、自己満足の世界なので、まったく興味のない人からは「何でそんなにお金をかけるのか」とか「1本あればいいじゃないか」と言われるんですが、やっぱり好きから。たとえば海に行くんだったらこれ、お洒落して食事の時はあれとか考えるだけでも楽しくなります。今日も眼鏡に合わせるならこれだろうなとIWCにしてみたんですよ。

柴田:スタイルによって時計のイメージも変わってくるし、選択肢も広がりますね。

佐久間:基本的にはブレスレットが一番好きなんですよ。でもいつ頃からか革ベルトがすごく魅力的に見えて。ヴァルカンはそんな気持ちになった一本です。

柴田:所有本数が増えるにつれ、好みのタイプも変わってきましたか。

佐久間:ある程度の年齢になると、服装や出入りする場所も変わりますからね。でもシンプルというのは変わりなく、ウブロもそうですね。若々しさもあるし、落ち着きもあるというところではIWCが最近のお気に入りです。ケースサイズが大きめなので、あまり興味がなかったのだけど、着けてみると意外。いまでは一番手にします。

柴田:先入観にとらわれず、違った魅力を発見できるのも時計の面白さですね。佐久間さんにとって時計とはどんな存在なのでしょうか。

佐久間:時計が自分をひとまわり大きくさせてくれるような気持ちになるし。時計に見合った自分になっていこうとも思います。所有する時計には一本一本思い入れがあり、手放すことはないかもしれないですね。あとは増えていくか。手は2本しかないのに(笑)。

Photography by Shinsuke Matsukawa

次回は、歯車族、佐久間一郎氏の「店内に流れるのは、真心を込めた時間」をご紹介いたします。

第1回

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柴田 充さん

柴田 充
Mitsuru Shibata

1962年 東京生まれ。フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。

佐久間 一郎さん

佐久間 一郎
Ichiro Sakuma

1967年 日本橋生まれ。大学卒業と同時に家業に入り、2001年にお店が新しくなったのを機に、三代目を継いで代表取締役となる。これまで日本橋本町一丁目青年会長や中央区常盤小学校・幼稚園のPTA会長、日本橋三四四会会長などを歴任。現在は日本橋料理飲食業組合理事、日本橋法人会厚生委員会副委員長などを務め、地域の交流も積極的に行なっている。趣味はゴルフや体を鍛えること。

繁乃鮨
江戸時代、日本橋には「毎朝千両ずつおちる」といわれるほどの大規模な魚河岸があった。繁乃鮨の前身である、日本橋魚河岸の魚屋「高根屋」は、当時から宮中の神事に使われる鮮魚を宮内庁に納めているという。昭和初期に鮨屋を創業。以来、代々受け継がれる眼識と職人技は食通たちを唸らせている名店。
住所:東京都中央区日本橋本町1‐4‐13高根屋ビル1F
電話番号:03-3241-3586
営業時間:11時〜 13時30分、17時〜21時
定休日:土日祝日

第1回
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