第3回 時計も人生も大事なのは積み重ねということ
広田: 時計を趣味にしたことで人生の息抜きができるという方がいらっしゃいます。個人的に思うのは、自分が生きている時間を実感するんだったら、自分の好きな時計で確認したいなと思うんですよね。
有馬: なるほど。僕なんかはスマホで見ることが多いので偉そうにいえませんが(笑)、永久カレンダーに惹かれまして。
広田: 今日されているパテック フィリップですね。ここぞという時の決め時計みたいな感じですか。
有馬: いやいや、それほどでも(笑)。永久カレンダーというのは自分が死んだ後も動き続けるというか、次世代への連続性があり、ロマンを感じます。それに例えばうるう年の表示には4年間を計測する必要があるわけですよね。ということは4年という千何百日、千何百分の一ずつ回っていく歯車があるわけで、僕自身は技術系でもあるので、その辺りがすごい!という単純な驚きであり、機械的な興味なんです。
広田: 確かに永久カレンダーを選ばれた理由がわかります。
有馬: 時の流れみたいなものを、これを着けて初めて感じたかもしれないですね。毎日24時間同じことを繰り返しているだけじゃなくて、一日一日積み重なっていっている感じがするんですよね、この時計に。
広田: それは事業にも通じますよね。日常の先に続いていく。
有馬: 後から振り返ると、人生って本当に積み重ねだなと思うんです。昔やったあんなこともこんなことも無駄になっていないというか。無駄なことなんてほとんどないんだなと思うことがこの歳になるとあります。
広田: 僕はまだ分からないです。残念ながら(笑)
有馬: それはやっぱり蓄積だなぁと。見方を変えれば、その時その時、頑張っているといつかどこかでそれが活きる。
広田: そう考えるとその時計はとても近しいものになりますね。
有馬: そうなんです。もちろん他の時計だってすべて積み重ねで、経年があると思うんですけれど、それが特に分かりやすいということでしょうね。
広田: それも時計の面白さであり、奥深さですね。ところで女性から見た男性の時計について関心があるとか。
有馬: 僕は時計って男性のファッションだと思っているので、たとえば女性が男性の時計を見てどんな印象を受けているのかというのを聞いてみたいなぁと。
広田: これは僕ではわからない(笑)。でも女性に聞くと、その男性の趣味をすごく反映するアイテムに見えるそうですよ。だから会話の糸口になる可能性はありますよね。ちなみにゴールドの時計はどう思われますか? こうした自由な雰囲気の会社でもビジネスマンにはつけづらい意識というのはありますか?
有馬: この会社は割とゴールドの時計をしている人は多くて(笑)。でもシルバーの方が使いやすいという感覚はありますね。個人的にはあまり目立つのもちょっと。だからゴールドは週末につける方が多いですね。気持ちも華やぐし。
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広田雅将
Masayuki Hirota
時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長
1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。
有馬 誠 Makoto Arima
楽天株式会社 副社長執行役員兼 CRO
1956年大阪生まれ。京都大学工学部卒業。倉敷紡績(クラボウ)、リクルートを経て、1996年ヤフー株式会社の第一号社員として立ち上げに参画、コンテンツの立ち上げやオンライン広告マーケットの創出に寄与し、インターネット広告ビジネスの中心人物として活躍。 2010年グーグル株式会社入社。グーグル日本法人専務を経て代表取締役に就任。2017年より楽天株式会社 副社長執行役員兼CROおよび楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任し現在に至る。著書には『ギャップはチャンスだ!』(日経BP社)『転職メソッド』(しののめ出版)がある。