歯車族バトン
2018/11/30
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TOKYO BASE社長 谷「確実性と挑戦の絶妙なバランス」2- 若い人には時計を手にするストーリーこそ必要

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第2回「若い人には時計を手にするストーリーこそ必要」

広田:谷さんが手がけたGショックのコラボモデルなんかを見ると、エッジーからクラシックまで本質的な魅力を理解し、相互のフィードバックをきちんとまとめられている。結果、平凡じゃなくて中庸になる。平凡とは何もせずにそのまま真ん中だけど、中庸は降り幅の大きさから最終的に納まるという感じですからね。この時計もその表れでしょう。すごく尖っているように見えるけれど、実は中庸という。


《studious限定》G-SHOCK DW-5600E-1/Gショック35周年とステュディオス10周年のダブルアニバーサリーを祝すコラボモデル。

谷:僕は引き算の考え方というのを大事にしていて、物事を考える時にざっくりしたアイデアをまず100個ほど考えて、そこから10個ぐらいに絞り、さらに9個を捨てて、最後にひとつ残ったものを採用します。最初にあった軸やコンセプトはブラさずに、結論に至るまではある意味でブラすという過程を大事にしています。

広田:そう考えると、やっぱり一本貫かれてますね。所有する時計にしても。

谷:余計なことをしないのかも。ヴィンテージは決して安い買い物ではないですけど、新品をたくさん買い漁るよりも、長く愛用できるということはあるのかもしれません。

広田:でも新品でトライしてみたいという時計はありますか。

谷:それこそバンフォードは興味あります。あんな発想や新しい切り口で、日本にも若いクリエイターが出てきたら面白いと思いますね。

広田:その可能性はあると思いますよ。


デイトナ・バンフォード(右)/英国カスタマイズブランドによる、デイトナをベースにしたマニア垂涎のモデル。デイトナRef.6241(左)/1960年代前半の手巻き式。ポール・ニューマンが愛用したレアモデル。

谷:バンフォードはちょっと上の世代からは邪道と思われがちですが、僕らからするとデイトナのポール・ニューマンと同じくらい好きなんですよね。そういう新しい感覚で、ひょっとしたらバンフォードが30年後ぐらいにロレックス以上の価値が出る可能性もゼロとは言えない。それと同じように、たとえ先輩たちに批判されても、自分たちの感覚で格好いいと思えるようなブランドが日本から出てきたらいいと思います。それはストリートから上がってくるものなのかもしれないし、そうなったら面白いでしょうね。

広田:今の若い人たちは時計を買わないと言われていますが、それについてはどう思われますか。

谷:お金だけの問題じゃないと思うんですよね。影響を与えるようなカリスマが少ないのかもしれない。それに若者は時計を買わないじゃなくて、欲しくさせるような展開をしていないのではないか。ファッションでは、売り場の演出始め、どんな空間でどんなストーリーで買うかということまで考えるようにしています。必要なのは高揚感をかき立て、満足度を上げること。

広田:購買のストーリーを作り込んでいこうというのはすごく面白いですね。

谷:やっぱり感覚としてはお客さんに近いんだと思います。僕は有名なレストランで飲むのもチェーン展開レストランで食べるのも楽しいし、お客さんの視点は大事にしていますね。時計選びでも意識しているのは、あんまり詳しくなり過ぎないということ。ヴィンテージも詳しくなり過ぎると余計なことまで考えちゃって、買い方がブレちゃう。だからあまり深追いしない。

広田:買うための情報は得ても、それにブラされない。ブレのなさというのはそこに根っこがあるんでしょう。いずれの時計も名作揃いですが、基本的には普通の人が欲しがるものの延長線にあるように感じます。

谷:そうですね。あと時計を買う時は上場するとか、香港に出店するとか、ありがちですがそういう人生のタイミングを重視しています。

 

取材・構成 柴田 充
写真 奥山栄一

次回は、歯車族、谷正人のウブロに学ぶブランディングとラグジュアリーをご紹介いたします。

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広田雅将さん

広田 雅将
Masayuki Hirota

時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長

1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。

谷 正人さん

谷 正人
Masato Tani

TOKYO BASE代表取締役CEO

1983年生まれ、静岡県浜松市出身。中央大学商学部卒業後、2006年に(株)デイトナインターナショナルに入社。翌年事業部長としてSTUDIOUS業態を立上げて、2009年には同社STUDIOUS事業部 事業部長を経て退職、MBOにて独立。2009年に(株)STUDIOUS 代表取締役として事業開始。2015年3月新業態UNITED TOKYOを立ち上げ、同年9月アパレル業界史上最年少で東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たす。2016年6月、株式会社STUDIOUSから株式会社TOKYO BASEへ商号変更。2017年2月に東京証券取引所第一部へ上場市場変更。2018年3月新業態PUBLIC TOKYOを立ち上げる。現在に至る。

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