歯車族バトン
2020/01/10
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牧野「時計は人と人をつなぎ、時代をつなぐ」2-「時計は共通言語であり、コミュニケーションツール」

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第2回「時計は共通言語であり、コミュニケーションツール」

広田:お客様とのお付き合いで、ユニークなエピソードはありますか。

牧野:やはり時計好きの方が多く、自分はそんなに詳しくないので逆に「教えてください」と言います。そうすると目をキラキラ輝かせてお話をされます。なかには100本くらい持っている方もいらっしゃいます。皆さん、時計が大好きなので、このお買場を作った時はすごく喜ばれました。

広田:確かに好きな方が多そうですよね。

牧野:ある時、ご迷惑をおかけしてお客さまのご自宅にお詫びに行ったことがありました。すると時計のワインダーをお持ちで、その話で盛り上がってしまいました。当初不機嫌であったお客さまがどんどん笑顔になって最後はとても親密になれて、以来いまもお付き合いさせていただいています。この時は時計をしていてよかったなと思いましたね(笑)。

広田:趣味の中でも服や時計は話題にしやすいのかもしれませんね。

牧野:共通言語ですからね。とくに男性のお客さまは、靴と時計。

広田:それは面白い。靴は時計と何が近いと思いますか。


いいモノを長く大切に使い続けたいと語る牧野さんの考え方に、深く共感をする広田編集長。

牧野:靴は直しながら一生愛用できると思います。お手入れなどで持ち主の性格も反映します。むしろ服は見た目だけでは、高級品かどうかぐらいしかわかりません。

広田:牧野さんは、日本を代表する百貨店の店長であり、セールスのプロフェッショナルでもあります。そういうお立場から見て、時計の面白さって何だと思いますか。

牧野:時計は、すごく二極化していると思います。スマホで十分という方と機械式時計をしている方と極端に分かれている。それも世の中の多様性でしょう。でもそこで「どうしてしないんですか」ということから話が広がっていく。私にとって時計は、その人の気持ちの中に入っていく入り口のようなもので、たとえ相手が時計をしていなくても大切なコミュニケーションツールです。

広田:一方で、現代において時計を着ける意味は何だと思いますか。

牧野:自己表現みたいなところだと思います。もちろんスマートウォッチをされる方もいますし、それぞれの個性を男が唯一表せるのが時計ではないかと僕は信じています。

広田:僕が個人的に思うのは、自分の人生なんだから時間ぐらい自分の好きな時計で確認したほうが楽しいということです。


香港で購入されたという、お父様から受け継いだオメガ。

牧野:私も一人の時はなるべく時計を見て、ニヤニヤしたり。磨いてみたりして。

広田:やはり相当お好きですね(笑)。ところでお持ちいただいた時計は、オメガやロレックスという実用的で上質な時計を持ってこられましたが、こうしたジャンルがお好きなんですか。

牧野:百貨店は意外に肉体労働なのですよ(笑)。だから気を使わないような時計が中心になります。買えるかどうかはわかりませんが、いつかはパテック フィリップとか欲しいんですけどね。でも多分これをしています。親もそうでしたから。

広田:それを良質な実用時計と呼ぶのでしょう。

 

取材・構成 柴田 充
写真 奥山栄一

次回は、歯車族、牧野伸喜の時計が繋ぐ、百貨店と顧客のより良い関係をご紹介いたします。

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広田雅将さん

広田 雅将
Masayuki Hirota

時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長

1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。

牧野 伸喜さん

牧野 伸喜
Nobuki Makino

三越伊勢丹 執行役員 日本橋三越本店長

1961年生まれ。大学卒業後、株式会社三越に入社し、日本橋三越本店に配属。その後、名古屋三越や仙台三越などに勤務。長く紳士部門を担当。伊勢丹浦店店長を経て2019年4月より現職。

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