第1回「少しつま先立ちした時計がスマート」
広田: 島田さんはエンジェル投資家として人を見る時の基準をはっきりお持ちでいらっしゃると思います。時計に対しても同じように判断基準をお持ちなんでしょうか。
島田: 投資先を選ぶような明確な基準があるわけではないですが、時計は自分らしさを表現するひとつの道具だと思っています。ですからどういう時計をどのようにつければどう見られるかということは考えますね。
広田: それはいつ頃からですか。
島田: 高級時計をつけ始めたのが34歳ぐらいからなのでそれ以来、自分なりの見方というか好みみたいなものが自然にこなれてきたという感じでしょうか。
広田: ちなみにいまは何本ぐらいお持ちなんでしょう。
島田: A.ランゲ&ゾーネが1本、ロジェ・デュブイが2本、カルティエが1本、パネライが2本。それにグランドセイコーとロレックスのダイバーズウォッチでしょうか。あとはGショックなんかも。
広田: わりにスポーティモデルが多いですね。
島田: 中学生ぐらいからサーフィンを始めて、当時、上の世代が持っていたセイコーの自動巻きダイバーズに惹かれたんですね。いつかお金を貯めてあれを買うんだと。ようやく高校2年ぐらいになってそれを買ったんです。
広田: 植村モデルとも呼ばれる名作ですね。それはいまも?
島田: いや、もう手放してしまって。でもまた欲しくなってオークションで見つけてもう1度手に入れました。さらにグランドセイコーの新しいダイバーズもこの間買っちゃいまして(笑)。
広田: ハイビートのムーブメントを積んだ「プロフェッショナル600mダイバーズ」ですね。
グランドセイコーの誇るハイビートメカニカルムーブメント「9S85」を搭載。
600M飽和潜水防水、ブライトチタンケースと、まさにプロフェッショナル
ダイバーズモデル。
島田: ダイバーズには思い入れがあり、いまの僕のステージを表現しているのも「ロレックス・サブマリーナー」だと思います。
広田: それはどういうことですか。
島田: 決して安い時計じゃないですが、べらぼうに高くない。気負わずつけられて、1本で仕事も遊びも両方ともバランスがとれている点が気に入ってます。
広田: 極端な話、これ1本でどこでも行けちゃうみたいな感じですものね。
島田: 自分の身の丈よりちょっとだけつま先立ちしたような、背伸びをするぐらいがやっぱり合っているんでしょうね。
広田: ちょっと背伸びというのはどういうことなんですか。
島田: 例えばダイヤがついて金無垢の時計なんかも大変素晴らしいですが、誰が見ても高価だと分かっちゃうじゃないですか。そういうものをつけるより、高級だけれどがんばれば買えそうなくらいで、収入や資産や生活スタイルにちょうど合っているくらいの時計がスマートでいいなと思います。
広田: そういうスタンスは昔からお持ちだったんですか。
島田: シンプルですっきりしたデザインが好みということもあります。それにブランド価値も含めて身の丈プラスアルファくらいが心地良い。例えば欧米の若い女性は、ブランドバッグを経済的には買えたとしても自分たちがそれを持つのは早いという自覚を持っていたりするじゃないですか。そんな感覚ですね。
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広田 雅将
Masayuki Hirota
時計ジャーナリスト・時計専門誌『Chronos日本版』編集長
1974年大阪府生まれ。会社員を経て、時計専門誌クロノス日本版編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』などがある。時計界では“博士”の愛称で親しまれており、時計に関する知識は業界でもトップクラス。英国時計学会会員。
島田 亨
Toru Shimada
USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長COO
東海大学文学部広報学科広報メディア課程卒業後、株式会社リクルートに入社。1989年、株式会社インテリジェンスを宇野康秀、鎌田和彦、前田徹也らと創業、1995年に取締役副社長に就任。1999年にインテリジェンス退社後は、エンジェル投資家として活動し、株式会社シーズホールディングス代表取締役、株式会社日光堂(現株式会社BMB)取締役副社長、株式会社楽天野球団代表取締役社長、楽天株式会社取締役執行役員 プロスポーツ事業カンパニー社長、フュージョン・コミュニケーションズ株式会社代表取締役社長、楽天株式会社 アジアRHQ準備室担当役員、代表取締役副社長などを歴任。2017年、株式会社U-NEXT取締役副社長COOに就任する。